令和元年度の改正建築物省エネ法の概要

2019年12月4日

建築物省エネ法が改正され、一部施行開始

2015年(平成27年)7月8日に「建築物省エネ法(建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律)」が公布され、2017年(平成29年)4月に完全施行された同法ですが、その後2年の期間を経て、今年2019年(令和元年)5月17日に、「建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律の一部を改正する法律(改正建築物省エネ法)」が公布されました。

この度の法改正では大きく分けて「6ヶ月施行」と「2年施行」という2段階の施行スケジュールがあります。そして公布後6ヶ月が経過した現在、「6ヶ月施行」といわれている内容が一部施行され、設計者の業務にも影響が出てきています。

建築物省エネ法が改正されました
制度概要チラシ(国土交通省)

国土交通省が発行しているリーフレットには、法改正の内容について2点の見出しが表示されており、大勢の設計者の業務に影響のある特徴的な変更がこの2点であることを意味しています。

  • 省エネ基準への適合義務制度の対象が、300㎡以上の非住宅建築物に拡大
  • 300㎡未満の小規模住宅・建築物について、建築士から建築主への省エネ性能に関する説明が義務づけ

規制措置の範囲が拡大したり、設計者の説明義務が生じたりするような大きな変更ではありますが、これらの変更は先ほど紹介した施行スケジュールのうち「2年施行」の予定となっているので、業務に影響が出るのは2021年(令和3年)4月頃からとなっています。喫緊に何かをしないといけないというものでもないため、まずは実際に施行開始となった「6ヶ月施行」関連の紹介をするべきかとは思いましたが、せっかく今回の記事で取り上げたのでこの特徴的な2点の内容についての要約をしたいと思います。

300㎡以上の非住宅用途に「適合義務」

2017年(平成29年)4月に始まった「省エネ適合性判定」は設計業務に大きなインパクトがありました。その対象は2,000㎡以上の非住宅用途です。つまり大規模な計画では予め省エネ計算を行い、省エネ基準に適合しなければ確認申請が下りなくなり、結果的に建物の工事をすることができないというものです。さらに完了検査までに設計上軽微な変更があったりすると、それらの照合も必要となるため、当然設計者の業務は増加します。

これまで「省エネ適合義務」となるのは非住宅用途で2,000㎡以上の大規模建築物であり、2,000㎡未満で300㎡以上の中規模建築物は「届出義務」というのはあるものの、基準に適合させなければならないというような義務はありませんでした。しかし今回の改正で、適合義務の対象が非住宅用途で300㎡以上ということとなります。

これまでの経験上、非住宅用途の計算を行なった結果、基準に適合させるのが困難という状況はあまり多くありません。国土交通省が行なっている調査でも平成29年度に届出をされた非住宅用途の中規模建築物における省エネ基準適合率は91%となっており、既に多くの非住宅用途の中規模建物は特別な配慮をしなくても適合しているというのが現実です。

基準を適合するのが難しくないのなら、設計の仕様もこれまで通りであまり気にしなくてもいいと楽天的に考える方もいるかと思いますが、設計者にとって注意すべきなのは「省エネ適合性判定」への対応により煩雑な業務が増えることです。省エネ計画書を作成し、所管行政庁又は登録建築物エネルギー消費性能判定機関からの細かい指摘をひとつひとつ対応しないと確認済証の発行が遅れてしまい、結果的に工事着工の予定にも影響が出てしまうという状況があることを念頭に置いて準備を進める必要があります。

また、規模と用途別の着工件数の割合で見ると、単純計算で現在の4.3倍もの件数の建築物に「省エネ適合性判定」が必要になるため、所管行政庁又は登録建築物エネルギー消費性能判定機関の業務量増大による審査の遅延も起こりうると考えられます。

設計者から建築主への「説明義務」

「建築物省エネ法」が施行されて設計業務に大きなインパクトがあったと思う設計者がいる一方で、その法律があること自体をまだ実感できていない設計者がいることも事実だと思います。同法が公布された当初は「2020年度(令和2年度)までに全ての建築物を対象に省エネ基準適合を目指す」とされていたものが、現実的には300㎡以上の非住宅についてのみがその当初の目標を達成できるものの、300㎡未満の建築物には法改正後も届出の義務さえ生じていません。戸建て住宅などを中心に300㎡未満の建築物を主に設計しているという設計者にとって、まだ気に留める必要性を感じていないのだと思います。

そして2017年(平成29年)エネルギー経済統計要覧の建築着工統計によると、法改正後に「適合義務」となるような300㎡以上の非住宅用途の建築物は全体のわずか3.4%しかありません。また、「届出義務」となっている300㎡以上の住宅用途の建築物は全体の4.9%となっています。つまり「建築物省エネ法」の規制対象にもなっていない建築物の方がはるかに大多数であり、全体の91.7%となっています。

数字だけ知ると「建築物省エネ法」の認知が進んでいないから、法規制自体が遅れているのではないかという印象がありますが、実は適合義務化される非住宅用途の中規模以上の建築物3.4%だけで、エネルギー消費量では52.2%を占めているようです。かといって大多数の小規模建築物を規制対象する意味がないわけではなく、件数が多いだけにそれぞれの小さい効果でも、結果的に大きな省エネ効果が期待できます。

とはいえ着工件数で91.7%という大多数の建築物を対象として一斉に「届出義務」としてしまうには、現実的にかなり無理があります。まずは設計者と建築主の省エネに関する理解を深め、「建築物省エネ法」の認知をする上で、段階的に「説明義務」というのを始めるというのが、納得のいく着地点だったのかもしれません。

2019年12月4日お知らせ, 建築物省エネ法, 省エネ適判