改正建築物省エネ法の6ヶ月施行の概要

2019年12月19日

混乱の少ない変更内容から施行開始

今年2019年(令和元年)5月17日に、「建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律の一部を改正する法律(改正建築物省エネ法)」が公布されました。今回の法改正の施行スケジュールによると改正内容によって大きく2段階の変更時期が設定されており、説明会などでは公布後6ヶ月後となる「6ヶ月施行」と公布後2年後の「2年施行」という分け方で解説されているようです。

比較的すぐに評価方法などを変更しても現場が混乱しないであろうものは「6ヶ月施行」に含まれ、新プログラムの試行や設計者への周知などに準備が必要なものは「2年施行」として2021年(令和3年)4月まで猶予を持たせているものであります。

法律の審議経過と今後の施行予定等
法律の審議経過と今後の施行予定等

変更内容についての概要を大きく3項目ずつにまとめてみると以下のようになっています。

2019年(令和元年)11月施行(6ヶ月施行)の概要

  1. 複数建築物連携型プロジェクトの容積率特例制度の対象への追加
  2. マンション等に係る届出義務制度の審査手続きの合理化
  3. 注文戸建住宅及び賃貸アパートの住宅トップランナー制度の対象への追加

2021年(令和3年)4月施行(2年施行)の概要

  1. 中規模のオフィスビル等の適合義務制度の対象への追加
  2. 戸建住宅等における建築士から建築主への説明義務制度の創設
  3. 気候・風土の特殊性を踏まえて、地方公共団体が独自に省エネ基準を強化できる仕組みを導入

共同住宅の評価方法に若干の簡素化あり

さて、今年2019年(令和元年)11月に「6ヶ月施行」といわれている内容が既に一部施行されています。今回は法改正で既に始まっている内容についていくつか説明してみたいと思います。先に3項目にあげた内容を含め、もう少し具体的に書かれた全体スケジュールが以下の図表となっています。

改正法の公布・試行スケジュール
改正法の公布・試行スケジュール

「改正法の公布・施行スケジュール」によると、既に「施行」と赤字で記載されているものは8項目ありますが、「6ヶ月施行」として先ほど上げた3項目についての概略を解説してみようと思います。

複数建築物連携型プロジェクトの容積率特例制度の対象への追加

最初にあげてある項目ではありますが、これは以前からあった誘導措置である性能向上計画認定制度の対象拡大の内容となります。具体的には省エネ基準を上回る誘導基準に適合している建物については省エネ性能向上のための設備設置スペースに関し容積率の特例が認められるという制度がありました。これは申請建物1棟毎で評価する前提だったため、同プロジェクトで複数棟ある様な大規模の計画では、容積率特例を十分にうけられないということで、複数棟を1棟の建築物で評価してもいいということになりました。

そもそもその様な大規模なプロジェクトを扱うのは大手ゼネコンの限られた設計者であり、行政や審査機関と事前の打ち合わせ等が行われるため、現場で混乱することがないのは容易に想像できます。

注文戸建住宅及び賃貸アパートの住宅トップランナー制度の対象への追加

この項目も、以前からあった住宅トップランナー制度の対象拡大の内容となります。これまでは建売戸建住宅を年間150戸以上供給する事業者は省エネ基準をより上回る性能のものを供給しなければならないという規制措置がありました。その対象はあくまでも建売住宅だけでしたが、法改正により年間300戸以上の注文戸建住宅を供給する事業者と、年間1000戸以上供給する事業者にも同様の規制措置がかかるというものです。

大手ハウスメーカーが供給する住宅についてはすでに適合義務化のような規制措置が始まっています。これについても大手ハウスメーカー設計部署の対応が必要となります。

マンション等に係る届出義務制度の審査手続きの合理化

「6ヶ月施行」の内容のうち、影響を受ける設計者が最も多いのではないかと思われるのがこの項目となります。300㎡以上の共同住宅にはこれまでも届出義務がありましたが、その評価方法は簡単なものではなくある程度の経験が必要なものであり、設計の仕様や計算方法により大きく数値にバラつきがあり、行政の審査も時間がかかるものとなっていました。今回の法改正は、その手間を減らす簡素化がねらいとなっています。

共同住宅の省エネ性能評価方法の簡素化
共同住宅の省エネ性能評価方法の簡素化

1・住棟全体での省エネ性能の評価方法の導入

共同住宅の評価では主に外皮性能の評価に手間がかかります。さらに共同住宅の場合には住棟全体の外皮性能を対象にして基準と照らし合わせるのでは不足で、外皮条件の異なる全部の住戸タイプを基準に照らし合わせる必要があります。住戸の形状が複雑で、外皮条件の悪くなりがちとなる角部屋の最下階や最上階という住戸では、基準に適合させることが困難になる場合が多々あります。そしてそのような住戸タイプがあると、最終的に住棟の計画として基準不適合という結果になることもありました。

それが今回の法改正では共同住宅の外皮基準において住棟全体(全住戸の平均)での評価ができることになりました。これにより最も不利な住戸があるせいで外皮性能の基準適合が難しかった場合でも全体の外皮性能が保たれていれば基準に適合しやすくなります。とはいえ、この評価方法の場合は基準値が通常のものよりも厳しい数値(例えば6地域の場合UA=0.87のところ、UA=0.75)となっているため、注意が必要です。

2・共用部の省エネ性能の評価方法の合理化

これまでの共同住宅の評価方法では各住戸の評価の他にも、共用部分の一次エネルギー消費量も評価する必要がありました。この評価には非住宅用途で主に使用されるWEBプログラムを使用するのですが、現在主流となっているモデル建物法を使用するのではなく、標準入力法を使用する必要があります。共用部が廊下や階段だけであればそれほど入力に手間がかかるわけではありませんが、空調室などの共用室数が多くなってくるとそれなりに手間がかかるものです。

しかし今回の法改正により、共用部の一次エネルギー消費量の評価を省略できることになりました。評価の手間が省けるという意味ではメリットがあり審査の簡素化にもつながります。しかし共用部の評価は一般的な仕様でも数値的にかなり効率化できるため、共用部の評価をすることで住棟全体の性能値をあげることができます。住戸部分の一次エネルギー消費量が基準を超えていたりする場合や、評価結果の数値を上げたい場合には共用部の評価をすることが有効ですので、手間に感じない場合にはこれまで通り共用部の評価をしていくことがいいのではないかと思っています。

3・その他、住宅用途の評価方法の簡素化

マンション等に係る届出義務制度の審査手続きの合理化の取り組みとして、今後新しい評価方法が追加される様です。共同住宅の計算住戸数を減らすことができる方法(フロア入力法)や、300㎡未満の小規模建築物戸建住宅について、これまで以上に簡単に評価できるプログラムが2020年(令和2年)4月に公表される予定とのことです。

地域区分の見直し

今年2019年(令和2年)の11月から地域区分の見直しが行われました。近年の市町村合併の増加により同じ自治体で複数の地域区分があったものを、原則的に自治体毎で1つの地域区分とすることにあわせて、最新の気象データ等を反映した変更となっております。これまでの地域区分と変わってしまっている地域については、混乱を避けるため新旧どちらの地域区分で評価してもいいという経過措置が取られています。

2019年12月19日お知らせ, 住宅の評価方法, 建築物省エネ法