一次エネルギー消費量対策(節湯水栓)

省エネに有効な節湯水栓

現行の省エネ基準基準で省エネ計算をしてみて計画中の建築物の一次エネルギー消費量が基準をオーバーしてしまっている場合、まずは断熱材や開口部の仕様、または無断熱の部分がないかどうかを再検討して外皮基準を改善するようにしますが、どうしても一次エネルギー消費量が目標に達成しないことがあります。

省エネをあまり気にしていない設計の場合で、外皮性能を現計画以上に高めることが困難という場合、設備仕様を少し見直してみることで、一次エネルギー消費量を抑えることが可能です。

まずは給湯器や空調機などの主要な設備を高性能な機種に変更することで、数値が大幅に改善する可能性があるので、建築コストや設計スケジュールにまだ余裕があるなら検討をしてみるのがいいです。しかし概ね予算が決まっているうえに設計がほぼ終了していて変更する余地があまりないという場合は、各衛生設備の給湯設備をチェックしてみることをおすすめします。

その場合でも、建物のすべての水栓をチェックする必要はありません。

住宅用途の場合には台所、浴室、洗面所の3箇所にどのような水栓機器を使用しているかだけがポイントとなりますし、非住宅用途の場合でも評価対象となる部分が決まっていますので、その箇所の水栓機器をチェックすればいいことになっています。

また、設備図などにメーカーや品番の記載があれば、各メーカーなどのカタログやホームページで省エネタイプかどうか検証することが可能です。

節湯(せつゆ)の工夫は主に3種類

節湯水栓と呼ばれるもので一次エネルギー消費量削減に効果のあるものは、水栓の形状構造の工夫によって「節湯A1,節湯B1,節湯C1」という3種類のタイプがあります。

節湯水栓の分類

節湯水栓の分類(一般社団法人日本バルブ工業会HPより抜粋)

節湯A1「手元止水機構」

節湯の工夫として最も簡単なものはシャワーなどの使用時、お湯を止めたいときにすぐに手元のボタンなどで止められる機能が考えられます。浴室の場合ではシャワーヘッド自体をそのタイプにするだけでもよく、安いものならホームセンターでも2,000円以下で手に入れることができます。台所水栓の場合は使用感の好き嫌いもありますし、賃貸物件などでシャワー付き水栓がまだ一般化しているわけでなないので、シャワー付水栓を採用している場合に手元機能付きかどうかを気にするのがいいでしょう。

節湯B1「小流量吐水機構」

浴室(ユニットバス)などには安全性の面で優位になっているサーモスタット湯水混合水栓が一般化している印象があります。入浴中は無意識のうちにお湯を使い過ぎてしまうものですが、給湯量を節約するためにお湯の中に空気を混入したりしてお湯の量自体を節約する構造となっているのが、小流量吐水機構付きの節湯水栓です。シャワーは高圧で痛いくらいが気持ちいいという人もいますが、この水栓を販売している各メーカーの宣伝文句は「空気の泡がまざっているため、お湯がやわらかくて気持ちいい。しかも省エネ。」というものです。一般的な水栓に比べて流量を35%程度抑えることができるので、節水と同時に節湯をしているといえます。シャワーヘッドとの組み合わせで節湯しているものもあるので、手元止水機構と併用できるものもあれば、できないものもあります。

節湯C1「水優先吐水機構」

キッチンの水栓には普通のシングルレバー水栓が設置されることが一般的ですが、最近では同じ形状のものでも節湯機能付きに工夫されている機種があります。カタログには「エコシングル」や「エコハンドル水栓」という商品名がついていたり「節湯C1」という表示があったりするので、従来のシングルレバー混合水栓では水だけを出したい場合は最大限に水方向に絞っていないと、微量のお湯を混合するために意図しないうちに給湯器が作動するような無駄が生じていました。これを解消するためにシングルレバーの可動域に給湯器が作動する範囲と作動しない範囲が明快に分かれる工夫がしてあるのが「水優先吐水機能」というものです。この機能があるせいで使用感が悪くなるという実感はほとんどありませんし、水とお湯の境のカチッという感覚は気持ちがいいものだし、少量のぬるま湯を出すために給湯器を動かさなくて済んでいる実感があります。すでにシステムキッチンの場合には標準搭載されている場合もありますので、気にしてみてください。

自動水栓

非住宅用途の「洗面・手洗い用途」の水栓に使用している場合には、一次エネルギー消費量の削減に若干の効果が見込めます。公共施設などのトイレの手洗い水栓として手をかざすとセンサーが感知してお湯を出したり止めたりする自動水栓はすでに一般化しているような印象があります。

節湯水栓の効果を検証してみよう

例として6地域の約60㎡の住戸で外皮性能等級4を達成しているものの、一次エネルギー消費量は基準より若干不足している(BEI=1.02)という場合があるとします。

節湯なし:BEI=1.02

節湯なし:BEI=1.02

台所、浴室、洗面所のすべてを節湯水栓に変更することで基準達成するか検討したところ、2697(MJ)の削減が可能で、一次エネルギー消費量の削減に十分効果があることがわかりました。(BEI=0.95)

節湯水栓フル装備:BEI=0.95

節湯水栓フル装備:BEI=0.95

とはいえ建築コストには限りがあるため、最低限の変更で済ませたいものです。一次エネルギー消費量をギリギリ達成することを目標として、どの節湯水栓を使用したら達成できるのかをプログラム上でトライ&エラーを繰り返しました。

手元止水のみ採用:BEI=1.00

手元止水のみ採用:BEI=1.00

その結果、この物件の場合は、浴室の手元止水機構を採用するだけで基準を達成(BEI=1.00)することがわかり、効率的に仕様変更の検討をすることができました。