省エネ性能の向上

2019年12月5日

「省エネ」は「我慢」ではない

省エネというと、「我慢」と思い浮かべる方は少なくないのではないでしょうか。

寒い冬に室内温度を上げようとしても、ふと「省エネ」のため暖房を控えてしまう。ついでに光熱費も気になるから暖房を控えることで節約にもなる。
だから我慢しよう。でも結果的に部屋は寒いまま。

こういうイメージが「省エネ」というイメージを形成してしまっているのではないでしょうか?

2015年(平成27)年7月に公布された「建築物省エネ法」ですが、法律の正式名称は「建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律」ということになっています。

名称の通り目的は「エネルギー消費性能の向上」であるため、我慢してエネルギー消費を削減するのが本当の目的ではありません。

この法律の狙いは「省エネ性能の向上」であるという視点で考えると、

1のエネルギーをつかって半分程度の効果しか出なかったものを、少なくとも1の効果を出すようにしようとか、1のエネルギーをつかって2〜3倍の効果を上げようとか

より創造的で前向きなイメージができると思います。具体的には、

隙間ばかりの部屋で暖房をするより、まずは隙間をふさぐ工夫をしようとか、少しのエネルギーでも効果的に暖かくなる最新の暖房設備に換えようとか。

そういうことでエネルギー消費の無駄をなくしていけるのではないかとイメージしてみてください。

省エネ性能向上のための3つの取組例
省エネ性能向上のための3つの取組例

さて、上の資料に「省エネ性能を向上させるための取組例」というのがあり、大きく分けて3つの取組例があげられています。

「取組例」とは書いているものの、省エネに配慮した設計をする場合においては住宅・非住宅ともにこの3つの方針が最重要な柱となっていきます。

①外壁、窓等を通しての熱の損失防止(断熱化)

主に意匠設計者が断熱材や開口部仕様を決定し、外皮性能を高める努力をしていく必要があります。

「グラスウール50mm」とか「ウレタン吹付20mm」とか、「アルミサッシ単板ガラス」という仕様では、今の省エネ基準をクリアすることは困難です。今後段階的に基準が厳しくなることも見据えて、断熱の意識を高めた設計を心がけましょう。

②設備の効率化

主に設備設計者が効率のいい機器を選定したり省エネの制御設計を行い効率化を目指す必要があります。

電気式床暖房、電気ヒーター、従来型給湯器、2バルブ水栓、蛍光灯などはもはや時代遅れになりつつある設備です。これらの設備を標準仕様として設計していませんか?効率のいい空調機や潜熱回収型給湯器を主として、節湯水栓断熱浴槽の採用をご検討ください。また、全館LED照明はすでに一般化しています。

③太陽光発電等による創エネ

主に建築主がエネルギー自給できる設備投資を検討します。

太陽光発電設備やコジェネレーション設備の導入には初期投資が必要です。しかし利用年数(約10年)を重ねることで投資額の回収が可能といわれています。今後、ZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)の普及が進んでくると考えられていますが、それらを実現するには創エネが不可欠となっています。

なお、日本の現在の省エネ基準というのは決して高いレベルではありません。実は他の先進国と比べると低すぎるというようなレベルであることを予めご承知ください。そのことはいずれ記事に書いてみたいと思っています。