ヒートショック

交通事故死より多い溺死者数?

住宅の断熱性能を向上させることは、省エネルギー性を向上させるだけでなく、健康被害の予防にもつながるといわれています。

室温の変化によって血圧が上下し、心臓や血管の疾患が起こることを一般的に「ヒートショック」といいます。この血圧変化の影響に伴い脳内出血や大動脈解離、心筋梗塞、脳梗塞などの病気を引き起こすことがあり、主に自宅の浴室で入浴中に発生し、失神し溺れて急死してしまうというのが典型的な例となっています。

厚生労働省がまとめている「人口動態統計(2015年)」によると、1年間に家庭内で発生した「浴槽内での溺死及び溺水」は4,761人とあります。しかしながら入浴中の溺死となると事故死として扱われ死後の鑑識が必要となることから、遺族が死因を「病死」にしたいという意向もあるようで、浴室での死亡数は正確ではありません。一方、地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター研究所の調査では、救急車で運ばれた患者数から推計し、入浴中の事故死の数は年間約 17,000人と推定しているようです。2015年の交通事故死数5,646人と比べてみるとその発生数に多いことに驚くのではないでしょうか?

さて、このヒートショックが起きる季節として11月〜2月の寒い季節となっているのは簡単に想像できると思いますが、「日本で最も寒い地域である北海道の発生率が極端に低い」と聞くと驚く方も多いのではないでしょうか?

都道府県別にみたヒートショックによる浴室内での死者数のグラフ

都道府県別ランキング:地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター 報道発表資料より

地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター研究所が平成26年3月に発表した、「都道府県別にみた高齢者1万人あたりCPA(入浴中心肺停止状態)件数(件)」というデータによると、件数が最も少ないのは沖縄県であり次いで北海道となっています。同じく寒いイメージのある青森県は4位です。

逆に発生件数が多いのは香川県、兵庫県、滋賀県と比較的温暖な地域であり、省エネルギー基準地域区分でいうと「5〜6地域」であることがわかります。つまりヒートショックの原因は室内の温度差であり、寒さではないのです。

省エネルギー基準地域区分「1〜2地域」のような寒い地域では住戸全体を断熱するのが一般的なため住戸内の温度差が少なくするような建て方となっていますが、温暖な地域での古い一戸建て住宅はその考え方で建てられていません。5〜6地域のような温暖な地域でも、脱衣室や浴室を中心に寒冷になる季節に対応した住宅内の温熱環境を工夫する必要があります。