温室効果ガス排出量の削減目標

2019年12月5日

パリ協定で温室効果ガスの削減を

2015年(平成27年)末にCOP21(国連気候変動枠組条約第21回締結国会議)という国際会議で、京都議定書に変わる「パリ協定」が採択されました。

参加する196カ国の全てが温室効果ガス排出量を削減するという目標を掲げていくことになり、日本では2013年(平成25年)から17年間で26%削減するという中期目標を閣議決定し、それを可能にするために2020年(平成32年)までに2005年の数値と比べ3.8%削減することが直近の目標ということになっています。

パリ協定における各国の削減目標
パリ協定における各国の削減目標(JCCCA 全国地球温暖化防止活動推進センターHPより)

でも温室効果ガス排出量を2005年(平成17年)と比べて3.8%削減するといっても、いったい誰がそんな数値を計算するのだろう?

国民一人一人がどれくらいの温室効果ガスを出しているのか、普段の生活には結びつかないものですし、どんな努力が効果を生むのか実感することもないので、とても想像しづらいものです。また目には見えない温室効果ガスなんてものの排出量を全て測定することは不可能ですので、とりあえず「地球温暖化対策の推進に関する法律(温対法)」という法律で温室効果ガス排出量の算定方法を策定しました。

空気のように目に見えない気体の計測は不可能だとしても、エネルギーの消費量であれば算定が可能であると考え、温室効果ガスの排出量はエネルギーの消費量に排出係数を乗じることで求められるように決めたようです。

これまで工場や自動車に比べ民生部門(住宅や建築)では、エネルギー消費削減は多様であり定量化できないもので、電気やガスなど設備ごとに消費量を分けて把握していました。それが平成25年度基準から「一次エネルギー消費量」の算定が可能になり、建築主に自己申告の届出をさせることで、温室効果ガス排出量を算出できる根拠が整いました。

2020年(平成32年)には全ての建物に届出義務が拡大する予定なので、その精度はより高まると考えられています。

さて、経済成長率を把握するために、国のGDP(国内総生産)を算出していますが、これは税金などを自己申告による数値を根拠として集計しています。そしてこれをサポートするのに税理士や会計士という専門家達が存在します。温室効果ガス排出量を自己申告の数値で算出するのに、全ての建築主が自分で計算をし届出に対応できるとは思えません。とはいえ全ての建築士がこれをサポートできるはずもないまま、待った無しに省エネ計算の届出義務や適合義務が拡大され開始されていきます。

今後、全国で省エネ計算を担う技術者が増え、省エネに対する意識がより高まっていくことを期待しています。