2020年(令和2年)4月に施行される内容まとめ

3つの新しい計算法試行版の公表開始

昨今の新型コロナウイルス感染症対策が長期化の様相を見せる中、通常業務に支障が出ている設計者は少なくないことと思います。また今夏の東京オリンピック開催も不透明な状況で、開催か延期か中止かなど様々な情報が飛び交っております。自粛ムードが続くと経済活動にも大きな悪影響を及ぼすことが予想されますので、スケジュールに沿って普段通りの業務ができる分野では過剰な自粛は控え、普段通りの業務を心がけたいところです。そして一刻も早い終息を願うばかりです。

さて、政府の自粛要請の影響で各地での説明会が中止となっているなどの影響はありますが、建築物省エネ法の法改正スケジュールにはさほど影響はない分野と考え、2020年(令和2年)4月に予定されている変化について今一度確認してみたいと思います。

8地域の外皮基準の見直し

まずは8地域(主に沖縄県)での外皮基準に変更があります。冬でも暖かく暖房を使用することが稀な沖縄の気候条件に鑑みて、これまでも外皮平均熱貫流率(UA値)の基準はなく、冷房期の平均日射熱取得率(ηAC値)の数値として3.2という基準だけがありました。この数値は主に外付ブラインドを設置することを誘導するための数値とされていましたが、現状として外付ブラインドやLow-Eガラスの普及は思うように進まなかったどころか、基準適合するために断熱性能の向上をする傾向になるため、かえって冷房エネルギーが増大してしまうというケースが多くあったようです。

そこで沖縄県における建築物の仕様の実態に踏まえて、冷房期の平均日射熱取得率(ηAC値)の基準を6.7に緩和することで合理化をはかるようです。

フロア入力法の試用版の公開

非住宅用途の計算においては2016年(平成28年)に床面積の5,000㎡という使用規模要件が撤廃されたあとモデル建物法での入力が普及したことにより、評価方法も簡略化され、基準適合することがより容易となりました。それに比べて共同住宅など住宅用途の評価は住戸ごとに評価することが求められているため、住戸タイプ数が増加することに比例して評価における煩雑さが増加するという状況がありました。

その煩雑さを部屋し簡略化させることを目的に、住戸ごとの評価ではなく、階(フロア)ごとの評価方法である「フロア入力法」というものが追加されるようです。そのため入力するデータ数が大幅に削減されることが期待できます。これまで外皮条件の厳しい住戸が1つでも不適合となると、結果的に住棟として不適合という評価となってしまっていた状況も、フロア単位での計算となることで基準適合が容易になることも予想されます。

WEBプログラムの試用版の他に、Excel正式版というのが公表され、Excel正式版については来月から実際に届出に使用できるとのことです。

モデル住宅法の試用版の公開

2021年(令和3年)4月から施行される説明義務制度に対応するために、戸建て住宅を対象にした「モデル住宅法」という簡易的な評価方法が追加されるようです。これまでにも性能基準に部位の面積を計算しない「簡易計算」がありましたが、それよりさらに簡易な計算方法を追加するようです。しかし性能基準によるものの他に仕様基準による評価方法もあるため、初めて計算する人にとってはどの評価方法を採用するべきか混乱してしまうのではないかという懸念もあります。

小規模版モデル建物法の試用版の公開

2021年(令和3年)4月から施行される説明義務制度に対応するために、非住宅用途を対象にしたプログラムも追加されるようです。これまでの非住宅標準入力法に比べて大幅に入力が簡略されたモデル建物法ですが、「小規模版モデル建物法」ではこれよりもさらに入力する箇所が大幅に少なくなるということです。BELSや誘導基準では評価に使用することができないとのことですが、評価結果にどのくらいの差異が出るかは今後、検証してみたいと思います。