達成基準について(1)

2019年12月5日

達成すべき設計値と基準値は?

建築物省エネ法において、届出義務を忘れたり虚偽の届出をすると罰せられるという記事は以前に書きましたが、今回は省エネ基準に基準に達成しないと確認申請が下りないとか、行政から指示や命令や勧告されたりするということについて書いてみたいと思います。

まず説明会テキストのうち基準について書いてある表が下のものです。

建築物省エネ法に初めて触れる設計者から見たら、何が書いてあるのか意味がわからないかもしれません。まずこの表には基準の数値というものを探しても書いてありません。省エネ基準というのは建築する地域によって細かく分かれており、達成すべき数値(例えば、6地域の住宅ではUA=0.87,ηA=2.8)というのはこの説明会テキストにも出てこないのです。ちなみに設計する上での大前提として、基準より小さい値のほうが性能値が良いということであり、より小さい値を目標として設計していくことになります。

建築物省エネ法に基づく基準の水準について
国土交通省:建築物省エネ法の概要説明会テキスト http://kentikubutsu-shoeneho.gio.filsp.jp/201607/pdf/text/shoene_gaiyou.pdf

ではこの表では何を言っているのでしょうか?まずこの表にある数値は

「基準値に対する設計値(設計値/基準値)」

ということであり、「1.0」というのは法律で求める基準と設計値が同じということを表しています。なので原則的には基準を超えないように設計をすると「1.0」を超えない数値になるわけです。より省エネ基準を厳しいものにすべき場合は、「0.9」とか「0.85」とかになっていき、逆に達成が厳しそうだから基準を緩くしようという意図で「1.1」の数値があるわけです。

では、この表の行の部分から順番で見ていきましょう。行の部分は大きく3つに分かれます。

①「エネルギー消費性能基準(適合義務、届出・指示、省エネ基準適合認定表示)
②「誘導基準(性能向上計画認定・容積率特例)」
③「住宅事業建築主基準」

③については、建売住宅やマンションデベロッパーなど、住宅を売ることに特化している建物について、普通より省エネ性能がいいこととするようにしています。また、②については、主に容積率の緩和を受けるなど高い性能をアピールしたい場合なので、基準以上に高い性能を求めています。なので両方とも、「1.0」より厳しい基準になっています。

多くの設計者の場合、②や③というのはレアケースとして良い気がします。結局は最も左側の①の場合を見るのですが、①の場合、さらに2つに分かれています。簡単にいうと、「新築」の場合と「増築」の場合と捉えて結構でしょう。「増築」の場合、既存部分の性能値がすでに低いことが想定されるので、増築部分と合わせて「1.1」以上を目指す事が求められます。

「新築」の届出をされる方は、住宅、非住宅ともに「1.0」すなわち、「基準値を超えないように設計する」ことが求められます。