部門別のエネルギー消費の推移

2019年12月5日

建築部門の省エネ対策が重要?

建築物省エネ法が制定された背景を語るとき、よく根拠にされるものの一つに「部門別のエネルギー消費の推移」というグラフがあります。

京都議定書での基準年とされる1990年(平成2年)と比べ、現在(2013年(平成25年))のエネルギー需給量を比べているものです。

省エネ法の規制強化が段階的に続けられるなどの成果もあり、温室効果ガス排出量はわずかに減少にむかっていると認識されるようになり、結果的に「京都メカニズムクレジット」と呼ばれる他国での排出削減プロジェクト分の排出削減量を加えることで、日本は削減目標としていた「6%」を達成したということになっています。

部門別のエネルギー消費の推移
国土交通省:建築物省エネ法の概要説明会テキスト http://kentikubutsu-shoeneho.gio.filsp.jp/201607/pdf/text/shoene_gaiyou.pdf

さて、省エネ法では主に「産業部門」「民生部門」「運輸部門」と3部門に分けられ規制されており、削減目標を達成した背景を部門別にみてみると、青線である「産業部門」と緑線である「運輸部門」が消費エネルギー量を削減しているのに比べ、建築物が大きな割合を占める「民生部門」という赤線のグラフだけが、1990年(平成2年)に比べ34%も増加しているという結果がわかりました。

しかも1990年(平成2年)では民生部門のシェアが全体の1/4程度だったのに比べ、現在(2013年)では1/3以上とシェアが拡大しています。

これでは努力を続けてきた他部門にとって、民生部門がお荷物的な存在に映るのも仕方ないような気がしてしまいます。そしてこのデータから「民生部門」の対策を重点的に進めるべきだということが決定的になり、「建築物省エネ法」が制定されることとなりました。

パリ協定の削減目標を達成するには、建築物をはじめとする民生部門の改善が不可欠とされており、それには建築主や設計者の意識改革を進めていく必要があると感じています。

世帯数の増加や使用機器の増加などライフスタイルが変化している中、2020年(平成32年)までには戸建住宅を含めた規制が予定されており、早い段階で対策を講じることが求められています。