共同住宅を計算するときの評価対象住戸(1)

2020年1月14日

共同住宅の計算には、評価対象住戸の確認が必須です。

省エネ計算は建物の用途によって、計算方法や使用するソフト(WEBプログラム)が変わります。
大きく分類すると(1)非住宅と(2)住宅の2点に絞られ、これらは計算ロジックが異なるため、非住宅用途の計画を住宅用の計算式に当てはめてみても評価結果は大きく違ってきてしまいます。

住宅用途の計算方法は非住宅のモデル建物法に比べて複雑で、難易度が高い

しかも木造かRC造か鉄骨造かなど、躯体構造によって熱橋の考え方を変えなければならないので、これから省エネ計算と届出を自分でやってみようという設計者は、まずは非住宅の計算に慣れてからでないと挫折する可能性が高いです。(ちなみに共同住宅の計算において、共用廊下やエントランスなどは非住宅の標準入力法で行うことになるので、最低限その知識も必要となります。)

また、平成25年基準が始まる前には、最も不利側と考えられる代表的な住戸のみを計算対象としても良いとされていましたが、現在の基準では共同住宅の場合、基本的に全住戸を計算の対象としなければなりません。さらに外皮計算だけでなく一次エネルギー消費量の計算も必要となっているので、計算書のページ数と作業量は以前と比べてかなり増えました。

評価する住戸数が増える分の作業手間が増えてくるため、当社で共同住宅用途での省エネ計算代行の見積りをする場合は、必ず事前に評価対象住戸数を確認しています。

さて、評価対象住戸数は必ずしも全体の住戸数と一致するとは限りません。断熱材仕様、寸法、開口部の大きさなどが全く同じで、左右反転プランや同階高の上下階プランがある場合の住戸については、外皮条件が全く同じと考えて計算を省略し、まとめてもいいこととなっています。

例として同じ面積で同じプランの住戸が並ぶ共同住戸の場合で評価対象住宅を見てみますと、計算が必要な評価対象住戸数はこのようになります。

(例1)基本的な評価対象住戸数の図
(例1)この場合の基本的な評価対象住戸数は3×3=9戸となります。

平面的にみると妻側(東)・中間・妻側(西)と3種類に分類し、断面的にみて最下階・中間階・最上階と3種類に分類します。

この場合、評価対象住戸数は3×3=9となり評価住戸数は9戸として計算することになります。

これが断面的に連続し10階建てとかになったり、平面的に連続して戸数が増えたりしても、外皮条件が同じであれば評価対象住戸数は9戸となります。

(例2)階数が増えても、評価対象住戸数変わらない図
(例2)断面的に階数が増えても、評価対象住戸数は3×3=9戸となります。

ただし、上のような場合でも階によって階高が違う場合には外皮条件が同じとはいえなくなるため、別条件として計算を分ける必要があります。

(以下、2020年(令和2年)1月14日加筆)

2019年5月に交付された法改正では、住宅の計算要領に大幅な変化があります。目的としては共同住宅の評価方法の簡素化となっています。現行の評価方法に加えて住棟全体(全住戸の平均)での評価が可能になったり、各フロア毎で情報を入力して評価が可能になる方法(フロア入力法)などです。施行版のプログラムが発表されるのは2020年4月の予定ですが、簡易な計算方法を採用する場合には達成すべき省エネ基準がより厳しめの数値となることに注意が必要です。