「基準に適合せず、必要と認める場合」の判断

2019年12月5日

届出義務にも一定の性能が必須?

今年2017年(平成29年)4月に省エネ適判が開始し、2,000㎡以上の非住宅用途の新築をする場合、省エネ基準を適合することが義務化されました。

また旧省エネ法から引き続き、300㎡以上の全ての新築には届出義務が課せられているものの、今の段階では省エネ基準を適合させる義務はありません。

省エネ適判が不要ではあるが、届出義務がある建物を新築する場合、省エネ基準を適合させる必要がないからといって省エネの配慮もせずに、届出をしようとすると、受付時に所管行政庁から受付を拒否され、門前払いをされるようなことがあるようです。

届出さえすれば良いと計算を大幅に省略して届出をしたり、虚偽の届出をして工事を着手したりしてしまうと50万円以下の罰金を課せられることもあるのでそのような危険なことはできませんが、真面目に計算をして届出をしても受け付けてもらえないとはどういうことなのでしょうか?

実は、確認申請と連動した省エネ適判のように省エネ基準を適合させる義務はないものの、建築物省エネ法では「基準に適合せず、必要と認める場合」には所管行政庁が「指示・命令等」をできることになっており、受付時にこの基準をチェックしているという場合が多いようです。

届出義務について
国土交通省:建築物省エネ法の概要説明会テキスト http://kentikubutsu-shoeneho.gio.filsp.jp/201607/pdf/text/shoene_gaiyou.pdf

所管行政庁がどの判断で必要と認めるのかについては各々の行政庁判断によることと思いますが、旧省エネ法の「著しく不十分な場合」を踏襲し、建築物省エネ法でも「基準に適合せず、必要と認める場合」の判断に一定の基準があるようです。そしてこれまで多くの自治体への届出をサポートしてきましたが、それは概ね同じ基準となっており暗黙の了解のようになっています。

その根拠となる書類を検索してみても各自治体のホームページでその基準が公開されているのを見かけることはあまりありません。そんな中、名古屋市のホームページに「名古屋市における建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律に係る 運用制度要綱」というものが公開されており、その要項の最後に「別表」というのが掲載されています。

(2019年(令和元年)12月追記)
   現在、名古屋市のホームページの該当ページは削除されています。

「名古屋市における建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律に係る 運用制度要綱」からの抜粋
「名古屋市における建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律に係る 運用制度要綱」からの抜粋

「3・著しく不十分」というのが「基準に適合せず、必要と認める場合」にあたるものと考えて良いと考えていますが、これによると以下の場合であれば届出書の受付が可能であると考えていいようです。

  • (1)一次エネルギー消費量の値(BEI,BEImなど)が1.10を超えていない。
  • (2)住宅において外皮性能が「等級3」を満たしている。

外皮平均熱貫流率が1.54、冷房期の平均日射熱取得率が3.8以内と具体的に記載してあるのは、名古屋市の気候区分が「6地域」であり、その地域の等級3にあたる基準値がUA=1.54とかηAC=3.8ということであり、全国的にみてみるとその地域区分による等級3の基準値(平成4年度基準)を判断基準にしているということがいえると考えています。

また、住宅用途の場合、平成25年度基準では住戸において一次エネルギー消費量が1.10を超えている住戸があるとその住戸毎に是正の対象になっていましたが、現在は建物全体の一次エネルギー消費量だけを対象としているようです。

当社で計算を行う場合、性能値が著しく不十分であることを確認した場合には速報とあわせて設計仕様変更の提案をさせていただき、届出可能な数値での成果物を作成することとしていますので、着工の21日前までの届出に慌てることがないよう配慮しサポートしております。